住宅省エネ基準とペレットストーブについて考える

2015年からペレットクラブと日本ペレットストーブ工業会により進められている2020年省エネ基準適合住宅義務化における対象住宅設備にペレットストーブが採用されるための動き。

日本ペレットストーブ工業会とペレットクラブからはペレットストーブの定義や出力、効率の算出方式はEN規格を用いることが国に提出されている。

これまで省エネ性についてはほぼ評価されなかったペレットストーブ。対象機器と認定されることにより「薪ストーブより総工費が安く、薪ストーブより簡単に、本物の炎と暖かさが味わえるストーブ」というものから一転、一次エネルギー消費量で他の暖房機より格段に低いとても省エネ性の高い暖房機となり、採用件数も増え、販売台数も増えるというストーリーを描いている。

ただ、いろいろと疑問に思う点もある。


設置費が高くなる?

新築時にペレットストーブを導入する場合、建築基準法の内装制限と火災予防条例の2つをクリアする必要がある。どちらも正攻法でクリアするのは難しい。内装制限をクリアするには背面が高温にならないペレットストーブにとっては過剰となる天井や壁を準不燃材で仕上げるか一部の壁を特定不燃材で仕上げる必要がある。火災予防条例をクリアするには薪ストーブと同じように排気口を天井より上にする必要がある。

現在はペレットストーブを導入しても特に評価対象とならないため、完成検査後に設置することで上記2点を回避できる。ペレットストーブが評価対象となると、新築確認申請時の図面に載るため、ペレットストーブを設置する部屋の内装を準不燃材または特定不燃材で仕上げたり、排気筒は屋根を抜いたり回避する必要がでてくる。排気口を屋根上に設置することは欧州では当たり前だし、強風による逆火を防ぐという安全性の意味でも必要だと思うが、設置費は確実に現在よりも高くなると思われる。仮にペレットストーブ本体が40万円として、内装対策に20万円、屋根抜き、または屋根回避となる排気筒は20万円、足場が必要となると設置費も20万円を超えるとなると、総工費は100万円。薪ストーブと変わらなくなる。

暖かい家にペレットストーブが採用されるか?

省エネ住宅に適合するような住宅はそもそも断熱性、気密性が高いため暖かい。暖かい家に総工費100万円をかけてまでペレットストーブが採用されるであろうか?

一方、手のとどかいない人にとっては省エネ住宅に適合する住宅は高すぎる。断熱材など目に見えない部分にお金をかけられず、ソーラーパネルも載せられないとなると、省エネ住宅に適合しない、適合ギリギリとなるかもしれない。そうした家にペレットストーブを勧めることで省エネ住宅に適合できるかもしれないが、そのような家はもともと寒い家に、ペレットストーブを導入しても断熱性、気密性が悪ければ暖かくない、しかも総工費は100万円。いくら新築時のローンに組み込めるとしても、高額なストーブなのに全然暖かくないとクレームにななるかもしれない。

となると、結局現状と変わらず、「炎の見えるインテリア」的に採用されることが多いのではないだろうか?


そもそも対象機器に認定されるか?

もう1点、一番心配していることがある。出力、効率などについては第三者機関でのテストが必要だが、テスト品と量産品とが同じ品質であることを証明する必要がある。簡単に言えばISO9001を取得している必要がある。省エネ機器に認定されるためレールを敷いても、2020年に走らせる列車がない、ということになってしまうのではないかということを、一番心配している。

ヒグチノート

ペレットストーブの仕事をしています。 仕事のこと、趣味のこと、その他色々と書いてみます。

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